身の丈に合った経営こそ、事業を長く続ける力になる。
中小企業診断士として、諫早・大村・島原を中心に、
さまざまな経営者の方とお話しする機会があります。
皆さん、本当に毎日一生懸命で、
「どうにかお客さんに喜んでもらいたい」
「ちゃんと従業員を守りたい」
「地域に迷惑をかけたくない」
そんな思いを胸に、静かに努力を積み重ねておられます。
ですが、ときどき耳にするのは、
「売上をもっと上げなきゃいけない」
「規模を大きくしないといけない」
「補助金を取らないと置いていかれる」
という“焦り”にも近い声です。
確かに、経営で数字は大事です。
私自身、数字を軽視したご支援はしません。
ただ、その前に必ずお伝えしていることがあります。
それは、
経営活動そのものが、すでに地域貢献である
という事実です。
困りごとを解決すること自体が、立派な地域貢献
経営は、特別なことをしようとしなくても、
実はもう地域を助けています。
お客さまの悩みや不便を少しでも軽くすること。
そのために商品を整えたり、対応の丁寧さを磨いたり、
営業時間を工夫したり、新しいサービスを考えたり。
一見、「当たり前」に見えること。
でも地域の方は、その当たり前にずいぶん助けられています。
私の地元・長崎でもそうですが、
「ちょっとこれでよかと?」「困っとったけん助かったよ」
そんな一言が、地域の小さな事業を支えていることも多いものです。
事業者さん自身は気づかれていないことがほとんどですが、
お客さんの“日常の困りごと”に寄り添う姿勢は、地域の安心そのものです。
利便性を少しずつ高めることは、地域の未来を守ること
地域の事業者さんが何気なくされている改善――
・注文しやすいようにメニューを見直した
・電話対応を少し丁寧にした
・ホームページで定休日をわかりやすくした
・店内を片づけて動きやすくした
こういう小さな一歩が、実はとても大事です。
派手さはなくても、
「利用しやすくなった」「また来よう」
という声を生み、地域の中に“便利さと安心”が積み上がっていきます。
大きな投資ではなくても、
毎日の改善が地域の生活そのものを良くしています。
納税は、静かで確かな地域貢献
そしてもう一つ、経営者の方は多くを語られませんが、
納税という形で地域を支えています。
「自分は大した額じゃないけん」と
控えめに言われる方が多いですが、
地域に根ざした事業者が継続して納税されることは、
とても大きな価値があります。
地域の道路も、学校も、公共サービスも、
こうした日々の納税で支えられています。
目立つことはなくても、確かな貢献です。
そして何より大切なのは「身の丈に合った経営規模」
これまで多くの経営支援をしてきて、
私が強く感じることがあります。
それは、
無理のない規模で、淡々と誠実に続いていく事業は強い
ということ。
背伸びをしすぎると、
資金繰りが苦しくなったり、
人手が追いつかなかったり、
経営者自身が疲れ果てたりします。
一方、身の丈にあった規模で経営されている方は、
お客さまとの距離が近く、
地域からの信頼も厚く、
長く愛される事業になります。
“無理せんでよか”というのは、
ただの慰めではありません。
経営を長く続けるための、れっきとした戦略です。
長崎の商売には、“静かな強さ”がある
長崎・諫早の事業者さんは、
派手さよりも、誠実さや温かさを大事にされる方が多い印象です。
・派手な宣伝はしない
・できることを、少しずつ
・嘘がない
・一人ひとりの顔を見て商売する
この姿勢そのものが、
地域からの信頼残高を積み立てています。
私はこういう商売がとても好きですし、
“地域で長く続く事業は、こういう姿勢から生まれる”
と確信しています。
私の役割:経営者の「静かな努力」を、経営として成立させること
中小企業診断士としての私の役割は、
無理をさせることでも、派手な成長を煽ることでもありません。
経営者がすでに持っている誠実な努力を、
ちゃんと“経営として成立する形”に整えること。
・数字の裏付けをつける
・無理のない経営計画を描く
・制度を味方につける
・紹介や口コミが自然に増える導線を作る
・孤独に悩まないよう伴走する
こういう“地に足のついた支援”こそ、
地域の事業者を守ると考えています。
最後に:経営者の皆さんへ
経営はときに孤独で、
悩みを口にしづらい場面もあると思います。
でも、どうか忘れないでください。
皆さんが毎日続けているその仕事は、
すでに地域を支えています。
地域の安心をつくっています。
たくさんの人の生活を、そっと良くしています。
そして、
無理のない身の丈経営こそが、最も“地域に続く力”になる
と私は思っています。
これからも、必要なときに、
ふっと話せる存在でいたいと思っています。
どうぞ無理をせず、等身大のままで。
地域のために、一緒に歩んでいきましょう。



